もりブログ(第53号)~連載シリーズ:中小企業のための「生産性向上」実践講座~
- 森 智亮
- 2 日前
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【第53号】「連載シリーズ(第1回):中小企業のための「生産性向上」実践講座(賃上げ・最低賃金対応編)」
フォレストファームの森です。こんにちは。
最近の中小企業振興の主テーマは「生産性向上」がキーワードになっている感じがします。この連載では、経営者の方々が「なぜ今、生産性向上に取り組むべきか」を取り上げてみたいと思います。
【第1回 「生産性向上」って何?政府が中小企業に求める本当の目的】
「生産性向上」という言葉を最近よく耳にする方も多いのではないでしょうか。政府が旗を振り、補助金制度でも重要なキーワードとなっています。でも、一体「生産性向上」とは何でしょう?ただ単に「早く、たくさん作る」ことでしょうか?
第1回は、この「生産性向上」という言葉の本当の意味を理解し、なぜ今、政府が中小企業にこれを強く求めているのか、その目的を一緒に考えていきます。
<労働生産性とは「付加価値」を増やすこと>
「生産性」と聞くと、多くの人は「いかに効率よく仕事をするか」を思い浮かべるかもしれません。もちろん、それも間違いではありませんが、より正確に言うと、それは「効率」です。経営における生産性の本当の意味は、「労働者1人あたり、あるいは1時間あたりに生み出す『付加価値』の大きさ」を指します。
では、この「付加価値」とは何でしょうか?
付加価値とは、企業が事業活動を通じて新たに生み出した価値のことです。たとえば、パン屋さんであれば、小麦粉や牛乳といった材料費を差し引いて、パンを売ったことで得られる儲けが「付加価値」となります。つまり、売上から、仕入れや外注費などのコストを引いた、企業が生み出した「利益の元」と考えてください。
政府や経済産業省が重要視しているのは、まさにこの「付加価値」を増やすことです。なぜなら、付加価値が増えれば、企業はより多くの利益を確保でき、その利益を社員の給与(賃金)や新たな事業投資に回すことができるからです。
<なぜ今、生産性向上が求められるのか?>
政府が中小企業に生産性向上を強く求める背景には、日本の抱える大きな課題が関わっています。
1. 深刻な人手不足
まず挙げられるのが、少子高齢化に伴う人手不足です。働く人が減っていく中で、これまでと同じやり方では、事業を継続していくこと自体が難しくなります。1人ひとりが生み出す付加価値を高めること、つまり生産性を向上させることが、少ない人数でも事業を回していくために不可欠なのです。
2. 賃上げと持続的成長の実現
次に、賃上げです。最近、物価が上昇し、生活費の負担が増しています。経済産業省や中小企業庁は、この物価上昇に負けないよう、中小企業も賃上げを実施できるようにすることを目指しています。しかし、やみくもに賃上げをしても、企業の体力がなければ、経営を圧迫してしまいます。そこで、生産性向上によって生み出された利益を、社員の給与として還元する「好循環」を生み出すことが期待されているのです。
3. 世界で勝ち抜く競争力
そして、グローバルな視点です。日本は、労働人口が減少する一方で、海外の企業は効率的に成長を続けています。国際的な競争力を保つためにも、日本の企業、特に経済の土台を支える中小企業が生産性を高めることは急務なのです。
<生産性向上のための3つの柱>
政府は、中小企業の生産性向上を支援するために、大きく分けて3つの分野に力を入れています。
1. デジタル化(DX)
ITを経営に活用することです。例えば、これまで手作業で行っていた伝票処理や顧客管理を、クラウド会計や顧客管理システム(CRM)に置き換えることで、業務を効率化し、より創造的な仕事に時間を使えるようになります。補助金制度も、この分野への投資を強く後押ししています。
2. 設備投資
最新の機械や設備を導入することです。例えば、製造業であれば、自動化されたロボットを導入して人手のかかる作業を任せたり、飲食店であれば、配膳ロボットやセルフレジを導入したりすることで、少ない人数でも多くの付加価値を生み出すことが可能になります。
3. 人材育成
従業員のスキルを向上させることです。新しい技術を使いこなすための研修や、創造性を高めるための学びの機会を提供することで、社員1人ひとりの生産性を底上げします。政府は、個人のスキルアップを支援する「リスキリング」の取り組みにも力を入れています。
生産性向上は、単なる効率化ツールを導入することではありません。これら3つの柱をバランス良く取り入れながら、「働く人が、より多くの価値を生み出し、その成果が正当に報われる」経営へとシフトしていくことが、今、日本全体で求められているのです。
<まとめ>
第1回では、「生産性向上」の言葉の本当の意味と、なぜ今、政府がこれを強く推進しているのかを解説しました。
重要なのは、「労働者1人あたりが生み出す付加価値の増加」であり、その目的は、人手不足の解消、賃上げと事業成長の好循環の実現、国際競争力の強化です。そして、そのための具体的なアプローチとして、DX、設備投資、人材育成の3つの柱があることをお伝えしました。
次回以降は、この連載を通じて、具体的な生産性向上の方法や、補助金の活用術、そして賃上げとの関係性について、さらに詳しく掘り下げていきます。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
では、また次回、お会いしましょう。
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