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浦川 拓也

浦川ブログ(第19号)人って何にお金を使うんだろう



 今回の事例は、老舗和菓子屋さんのお話を。神奈川県内で創業60年を超える和菓子屋さんです。僕のセミナーを聞いてくれた女将さんから相談されました。内容はこうです。修行に出ている息子が家に戻ってくる。とっても楽しみで嬉しいことなのだが、何せ家族経営の小さなお店。大人一人分の給料を払っていくのも結構大変です。息子が戻ってくるこの機会に、お店を成長させるような何か企画が出来ないか、lこういう相談でした。


 どんな風に仕事をしているのかをまずは聞きました。自慢は自家製のあんこづくり。あんこづくりは大変だから工場に外注する和菓子店が多いんだそうです。うちは自家製を守っているとのことでした。それとお祖父さんもまだ現役で社長の旦那さんと息子で、親子3代でお菓子を作っている。あとはおばあちゃんと女将さんの明るい接客が売り。なるほど。


 僕はこういうとき考えます。主観と客観です。美味しいとか丁寧bな仕事、明るい接客などなど。これって主観です。誰もうちのお菓子はまずいですとは言いません。丁寧で明るい接客じゃありませんとも言いません。真偽の程はさておいてみんな同じような表現になります。唯一の客観は親子3代での菓子づくり。これは珍しいし、楽しい。3という数字は客観です。ここをなんとか活かせないか?と考えました。


 親子3代での菓子づくりを楽しんでもらおう。3代目が戻ってきたことをエンタメに出来ないか?それもお客さんを参加型で遊んでもらうには?そこで提案したのが、「3代目デビュー記念『饅頭総選挙』3代目からの挑戦状!」という企画です。親子3代でそれぞれオリジナルの饅頭を作り味比べでお客さんに投票してもらおうという内容です。プレスリリースも作って広く広報しましたが、なかなか取材までには至らず、SNSなどで地道に広報していきました。ここで考えたのは、饅頭を考え悩み造る過程を皆さんに楽しんでもらうこと。特に3代目の情報は大事です。なので女将さんにお願いしました。3代目の苦悩を発信してくれと。それも写真付きで。そしたらどうでしょう。地元のフォロアーから、応援メッセージが届くではありませんか。この時点でこの企画はうまくいくと確信しました。売れる前からみんなあ欲しがっているんです。この企画にこの商品に共感が集まってきているんです。

 

 用意した200セットはあっという間に完売しました。勝ったのはおじいちゃん。おじいちゃんが78票、3代目が50票、社長は44票という結果になりました。社長が負けちゃった。。。ここで終わらせるわけにはいきません。社長のリベンジ企画を早速作りました。「2代目の逆襲!怒りのアンボー」と銘打って新商品を売り出しました。ハリウッド映画のパロディで変装もし、パッケージを楽しいものにしました。社長に人肌脱いでもらいました。これも売れました。もはやお菓子が売れているというより、コミュニケーションツールが売れている感じです。


 そんなことをしていると、お客さんからまた選挙やって欲しいとの要望が湧いてきて、今度は「総選挙『大福』秋の陣」という第2弾の企画です。そしたらこれはきましたよ。お笑いタレントさんの街ブラ企画で取材が入りました。用意した500セット完売です。今度は2代目の社長が勝ちました。よかった・・・。


 でも何より嬉しかったのが、投票用紙の裏に書いてくれたメッセージです。「ご馳走様です!どれも美味しかったのですが1票投じます。次回も期待しています」とか「メープルきなこも美味しくてすっごく悩みました。正統派の粒あん大福があんなに美味しいなんて!また買いに行きます!」こういったメッセージがたくさんきました。


 女将さんと話しました。お客さんって何にお金使ったんでしょうね。饅頭や大福が売れているんですが、それ以上にこの親子3代総選挙を楽しんでくれた。人ってこうやってお金使うんですよね。こうして老舗和菓子屋さんの3代目デビュー企画は大成功でした。 

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