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金融機関が行う企業の「財務分析」と「格付け」②



みなさん、こんにちは!

フォレストファームの大川です。


前回に続いて、金融機関が日々行っている企業の財務分析と格付けについてお話します。

企業の皆さまは、会計年度ごとに、金融機関へ「決算書」を提出されると思います。

その決算書は、以下のような流れで財務分析が行われ、格付けがなされます。

経営に直結するお話ではありませんが、財務に関するマメ知識としてご参考になれば幸いです。


1.決算書分析システムへの情報登録


『決算報告書』より、①「貸借対照表」・②「損益計算書」・③「販売費及び一般管理費内訳書」・④「製造原価報告書」・⑤「株主資本等変動計算書」の数値を『決算書分析システム』に情報登録します。正しく数値が入力されると、主要な経営指標等が自動的に算出され、直近3期分のデータをベースに定量的な財務分析が行われます。


2.実態バランスシートへの修正(修正財務)


実態バランスシートとは、決算書(帳簿上)の資産・負債勘定を細かく分析して、実質的な数値を算出することにより作成されたバランスシート(貸借対照表)です。

この実態バランスシートへの修正は機械的にできないため、手作業になります。

修正財務の重要なポイントは、①「資産性の評価」・②「資本性の有無」の2点です。


①の資産性の評価では、帳簿上に計上された各資産勘定の中に資産性の乏しいもの(不良化しているもの)がないか、また時価と大きく乖離しているものはないか等を調査します。

不良化しているものや、含み損が発生している資産があれば、その額が資産勘定からマイナスされます(貸倒損失を計上した場合と同様に、純資産額(資本)もマイナスされることになります)。 ⇒ マイナス要因

反対に、含み益が発生している資産があれば、その額が資産勘定にプラスされ、純資産額(資本)を増加することができます。 ⇒ プラス要因


※前文のイメージは下図のとおりです。


②の資本性の有無では、帳簿上に計上された各負債勘定の中に資本性が高いもの(支払いや返済が不要なもの)がないかを調査します。

中小企業や小規模事業者の場合、法人と代表者個人の一体性が高いため、個人から法人へ資金提供しているケースが多いです(法人の決算書では「役員借入金」などで計上されます)。この役員借入金は「資本」とみなされ、その額を負債勘定から純資産勘定へ振り替えることができます。 ⇒ プラス要因


※イメージは下図のとおりです。



3.減価償却前経常利益と債務償還年数の算出


減価償却前経常利益は、経常的なキャッシュフローとも呼ばれ、企業の収益力を数値化したものと言えます。

・計算式・・・「経常利益+減価償却費」


債務償還年数は、金融機関等からの借入金(利益償還を要する有利子負債)を、減価償却前経常利益を基準に何年間で全額返済できるかを表した指標で、格付け決定の重要な根拠になります。

・計算式・・・「利益償還を要する有利子負債÷減価償却前経常利益」


※減価償却前経常利益は、2期平均値を採用する場合があります。


4.格付け(債務者区分)の決定


原則、3の実態バランスシートと、4の減価償却前経常利益および債務償還年数を根拠として、各企業の格付け(前回ご紹介しました「正常先」・「要注意先」・「破綻懸念先」・「実質破綻先」・「破綻先」の5段階で表す債務者区分)を決定しますが、最終判断には、企業が有する「技術力」や「販売力」、「組織力」や「人材力」など、いわゆる定性要因が加味されます。

金融機関は、日々における企業さまとのコミュニケーションの中で、「強み」や「機会」を聴き取り、格付けのランクアップに活かしています。

なお、格付け(債務者区分)の具体的な判断根拠やランクアップに向けた対策については、次回に詳しくお話する予定です。


今回は、財務分析と格付けの流れについてお話しました。

次回は、いよいよシリーズ最終回となります。着目すべき勘定科目や経営指標をご紹介しつつ、格付けランクアップの秘訣をお伝えできればと思いますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。ご拝読ありがとうございました。

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