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浦川 拓也

浦川ブログ(第21号)「誰かに褒められたことはない?」



昭和44年創業のプラスチック部品の製造・販売をする事業者さんを支援した事例をご紹介します。

下請け仕事が減少する中、直接消費者に届けられる自社オリジナル製品の開発にチャレンジしたとのこと。プラスチック成型の高い技術を活かし、高さ調節のできるゴルフのティーを開発、商品化しました。自身でゴルフショップ等に売り込んでみるものの「折れないティーでは新たなティーが売れない」と断られることに。取引先は一向に見つからない。在庫は3000本ある。どうしたら売れるだろうか?

社長さんからのご相談はこういう感じでした。

 

僕はこういう時にこう聞きます。

全く売れていないとはいえ「誰かに褒められたことはない?」

 

そうしたら興味深いエピソードを伺うことができました。

ゴルフのティーを仲間に使ってもらったところ、ある一人の友達がものすごく喜んだそうです。

僕はなんで?と聞きました。

 

その人は、脳梗塞かなんかを発症して、手が少し震えるそうなんです。ティーアップする時、手が震えるからティーアップに時間がかかるんですね。周りに迷惑をかけたくないからもうゴルフは止めると周囲に漏らしていたそうです。しかし、今回の新しいティーを使ってみたら違うそうなんです。ティーアップしやすいんだそうです。

普通のものよりボールを載せる面が大きく、ボディも太いので手が震えがちな高齢者でもティーアップしやすいことが分かりました。

 

僕が提案したのは以下のような感じです。

 

価値の再設定

「壊れない」 → 「高齢者向け」

ドライバーでぶったたいても壊れないという価値から、手が震えがちな高齢者でもティーアップしやすいという価値へ再設定しました。そして高齢者ゴルファー向けのティーというコンセプトで発信し直します。

ポイント!

高齢者にターゲットを絞ることで、プレゼント需要が見込める。

「おじいちゃんにいつまでもゴルフを続けて欲しい!」

値段も大幅に上げました。最初は3本セットで700円くらいだったんですけど、3本セットで3,000円に上げました。値段を決める場合、積み上げ方式で決める事業者さんが多いです。僕はどんな価値をもたらすかで値段を決めたほうがいいと思っています。原材料に手間賃を足していくらではなく、どんなプライスレスな価値を届けられるかです。

考えても見てください。おじいちゃんがゴルフを止めて家でテレビでも見ていたとしたら・・・確実に弱りますよね。3,000円で元気でいて欲しいという願いが叶うのなら安いもんです。これこそプライスレスな価値ですね。3,000円にすることで初めてプレゼントになります。

 

おかげさまでこのゴルフのティーセットは完売しました。町工場のチャレンジ。初めてのオリジナル商品開発。既存にない高齢者向けゴルフのティーというコンセプト。いろいろな切り口でメディア等で紹介されたこともあり在庫すべて売り切ることが出来ました。1000セット3,000円で300万円の売上です。価値の再設定がうまくいった例です。僕には手が震えがちでゴルフを諦めかけていたおじいちゃんの寂しそうな姿が見えたんですよね。顧客が映像で浮かびました。こういう時は上手くいきますね。みなさんも顧客の姿がありありと映像で浮かぶようにアイデアを出してみてください。

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