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大川 貴

金融機関の融資に密接する『信用保証協会』とは? ~セーフティネット保証編~


みなさん、こんにちは!

フォレストファームの大川です。


前回に続き、金融機関から融資を受ける際の公的な保証機関『信用保証協会』で運用されている「保証制度」について紹介していきたいと思います。


第二弾となる今回は、最も有名で多くの企業さまが利用されている『セーフティネット保証』をご紹介します。この保証制度は、私個人としても非常になじみ深い制度で、信用金庫で働いていた20数年間、大変お世話になりました。


【セーフティネット保証】

「セーフティネット」とは「安全網」と訳されて、網の目のように救済策を張ることで、安全や安心を提供する仕組みのことです。

この言葉の意味のとおり、セーフティネット保証とは、経済的なリスクが発生して、経営の安定に支障をきたしている企業さまの資金繰りを安全・安心にサポートする保証制度です。

この制度で最も特徴的なのが、区市町村から、セーフティネットが必要な状況にあることを証明する「認定」を受けることです。

そしてもう一つ、制度として非常に有用性が高い理由でもあるのですが、信用保証の「別枠」を利用できることです。

この「認定」と「別枠」をキーワードとして、その特徴についてお話をさせていただきます。


・「認定」について

上記のとおり、セーフティネット保証は、「認定」を受けた方のみ利用できる保証制度です。

その「認定」には、以下8つの要件があります。

上記1~8号のうち、最も利用されているのが「5号」認定です。

「5号」認定は、全国的に業況が悪化している業種を営む中小企業者と定義されています。

指定業種一覧(中小企業庁ホームページ参照)のとおり、500種以上の幅広い業種が対象となりますが、これだけでは取得要件は満たせず、以下のイ.またはロ.のいずれかに該当する必要があります。

イ.指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少している中小企業者

ロ.指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者

主にイ.に該当することで「5号」認定を取得されている企業が多いと思いますが、こちらは、前期および当期の「残高試算表」等により比較をして、減少していることを証明します。


次に利用されているいるのが「4号」認定です。

「4号」認定は、特定地域の災害等により影響を受けている中小企業者と定義されています。

災害等の指定案件は、中小企業庁のホームページで随時更新され、最近では、各地で発生している「大雨による災害」などが該当しています。

参考ですが、新型コロナウイルス感染症については、令和2年3月から令和6年6月まで、4年以上の長期間にわたり、災害等の指定案件になっていました。


「4号」認定の取得には、以下①および②のいずれにも該当する必要があります。

②    災害等の指定を受けた地域において、原則1年間以上継続して事業を行っていること

②指定を受けた災害等の発生に起因して、その事業に係る当該災害等の影響を受けた後、原則として最近1か月間の売上高又は販売数量(建設業にあっては、売上工事高又は受注残高。以下「売上高等」という。)が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること

こちらも、前期および当期の「残高試算表」等により比較をして、減少していることを証明することになります。


一見、「4号」認定も「5号」認定も、セーフティネット保証を利用できるという面では同じに思えますが、資金調達の観点からもう少し詳しくお話をすると、重要な違いがあります。

ポイントは、ⅰ.信用保証料率、ⅱ.責任共有制度の2点です。

上記比較表のとおり、信用保証料率は、「4号」認定より「5号」認定の方が低く、中小企業者の費用負担が軽減されます。(※1)

また、責任共有制度では、「4号」認定が対象外に対して、「5号」認定は対象となります。

※責任共有制度とは、金融機関と信用保証協会の間の取り決めで、

・「対象外」… 信用保証協会が融資額の100%を保証すること

・「対 象」… 金融機関が融資額の一部(20%相当)を保証負担すること

つまり、金融機関側からすると、信用保証協会が100%保証してくれる「4号」認定の方が、融資審査が簡易的になる(≒融資が受けやすくなる)傾向にあります。(※2)

この2点を知り得ておくことで、セーフティネット保証に限らず、信用保証協会を利用した融資を受ける際に、金融機関との交渉に役立つはずです。

(※1)前記は、一般的なセーフティネット保証を例にしていますが、実際には、都道府県や区市町村と連携した制度融資などがあり、信用保証料率は変動します。

(※2)一般的な傾向であり、全ての金融機関に該当するものではありません。


なお、区市町村で受ける「認定」については、以下3つの方法で取得することができます。

1. 区市町村の窓口で申請(自社で手続き)

2. インターネットで電子申請(自社で手続き) ※GビズIDが必要

3.インターネットで電子申請(金融機関に代理申請を委任) ※GビズIDが必要


・「別枠」について

「認定」が長くなり過ぎて、忘れてしまいそうでしたが、続いて「別枠」についてお話します。

そもそも「別枠」って何のこと? だと思います。

簡単に解説しますと、通常『信用保証協会』に保証してもらえる金額は、最大2億8,000万円で、これを「一般保証枠」と呼んでいます。

ですが、セーフティネット保証を利用すると、この「一般保証枠」とは「別枠」で、最大2億8,000万円まで利用できるのです。資金調達の幅が2倍に増えるのはすごいことですよね。

※無担保枠としては、一般保証枠で8,000万円、別枠で8,000万円までです。


私事になりますが、信用金庫在籍時に初めてこのセーフティネット保証を利用して融資をしたのは、バブル崩壊後の金融不安が生じている時期(1998年)で、今から約26年前になります。この当時、本当に画期的な制度で、多くの企業さまが助けられたことを記憶しています。

同時に、貸し過ぎてモラルハザードを指摘された保証制度でもありましたが...(汗)

以降「失われた20年」を経て今日まで、中小企業の資金調達を『セーフティネット保証』が支え続けています。直近では、新型コロナウイルス感染症による経済危機、いわゆるコロナ禍においても、多くの企業さまが利用されたことは記憶に新しいと思います。

何だか論文みたいになってしまいましたが、とにかく利用価値が高く、中小企業の皆さまの資金繰りを長期に支えている保証制度であることを、ぜひ知ってもらえたらと思います。


最後に、神奈川県信用保証協会のホームページより、「セーフティネット保証」を活用した各種保証制度(県制度も合わせて掲載された分かりやすい紹介サイト)を添付しますので、ぜひご参照ください。

「信用保証料率」や「責任共有制度」なども比較しながら見ていただけると幸いです。

(神奈川県信用保証協会HP) https://www.cgc-kanagawa.or.jp/guarantee/safetynet/


今回は、信用保証協会の保証制度『セーフティネット保証』についてお話しました。

弊社では、金融機関との融資取引をメインとしたファイナンスサポートサービスをご用意しています。セーフティネット保証の「認定」はどのように取得すればよいか、またどのような保証制度を活用できるのかなど、ご不明な点がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

前回と今回は、比較的メジャーで幅広く利用されている保証制度をご紹介しました。次回以降は、様々な経営課題に即した保証制度を紹介していきますので、ご興味のある方は、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

この度も、ご拝読ありがとうございました。

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