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小説 フォレスト中小企業診断士事務所〜伴走者たちの協奏曲〜第22話

小池 俊介


第22話「品質と名声の確立 - 金賞が拓く未来」

大正精肉店の特製ソーセージが、ドイツのIFFAで金賞を受賞したという知らせが届いた瞬間、家族全員の歓声が事務所に響き渡った。勝氏は感慨深げに呟いた。「俺たちがずっと大事にしてきたものが、ついに世界に認められたんだな…」その顔には職人としての誇りと感動が滲んでいた。


金賞がもたらす新たなチャンス

受賞の報告を受けたフォレスト中小企業診断士事務所のメンバーも、自分たちのことのように喜びを分かち合った。「勝さん、本当におめでとうございます。この受賞は商品そのものだけでなく、120年の歴史と皆さんの努力が評価された証です」と森診断士が語ると、勝氏は「みんなの支えがなければここまで来れなかった」と感謝の言葉を口にした。


タカシは興奮気味に続けた。「この金賞のブランド力を最大限に活かしましょう!新たな顧客層を開拓する絶好の機会です。」その熱い提案に、勝氏は力強く頷いた。「やってみよう。このチャンスを逃すわけにはいかない。」


メディア活用の鍵

フォレスト事務所は、受賞を広く周知するためのPR戦略をすぐに立案した。エリカが中心となり、メディアリストの作成を開始。「飲食店向けの専門メディア、全国規模の大手メディア、地元のローカル新聞、そして影響力のあるインフルエンサーなど、多方面に情報を届けます」とエリカが説明すると、架純が「SNSでも発信を強化します。地元の魅力を伝えながら広めてみます」と意欲を見せた。


小池診断士も「受賞の背景には、皆さんの努力と伝統があります。そのストーリーをしっかり伝えることで、お客様に響く発信ができます」と背中を押した。


全国ネットのテレビ番組での紹介

その中で特に大きな追い風となったのが、全国ネットのテレビ番組で特集されることになったことだった。「120年の伝統と国際的な評価を受けた老舗精肉店」という切り口で取材が進み、勝氏と架純がインタビューに応じた。


「120年の歴史の中で、この受賞は私たちにとって大きな転機です。これからも心を込めた商品を作り、多くの方に愛されるよう努力していきます」と語る勝氏の姿がテレビ画面に映し出された。


放送終了後、オンラインショップには注文が殺到し、架純が驚きの声を上げた。「番組終了後1時間で、ネット注文が200件を超えています!」家族全員が歓声を上げ、勝氏も「こんなことが起きるなんて…」と信じられない表情を浮かべた。


急成長への対応と品質管理

急増する注文に対応するため、新しい設備がフル稼働し、家族全員が一致団結して納品作業に取り組んだ。「こういう時こそ、チームワークが大事だな」と利夫が話す姿には、家族経営の強みが現れていた。


一方で、小池診断士は冷静にアドバイスした。「急成長の時期こそ、品質管理を徹底する必要があります。一度信頼を失うと、取り戻すのは非常に難しいです。」その言葉に勝氏は頷き、「これが正念場だな。絶対に手を抜かない」と決意を新たにした。


新たな顧客層へのアプローチ

テレビ放送をきっかけに、大手デパートや高級ホテルからの問い合わせが増え、これまで想像もしなかった市場が広がり始めた。「これで、うちの味がもっと多くの人に届くようになるな」と勝氏が話すと、雅子が「あなたの頑張りがようやく報われたのね」と微笑みながら応えた。


経営改善の着眼点と支援のポイント

ブランド力の最大活用:IFFA金賞受賞を軸に、大手メディアや専門媒体を活用してPRを強化。

EC販路の拡大策:クーポンコード発行や口コミ促進を通じ、オンラインショップの顧客基盤を拡充。

品質管理の徹底:成長期における信頼維持を最優先に据え、徹底的な品質管理を実施。


金賞という大きな追い風を受け、大正精肉店は地域の老舗から全国規模へと飛躍の一歩を踏み出した。家族とフォレスト事務所が一丸となり築き上げたこの成功は、さらなる成長への土台となる。次回は、この成果をどう持続させていくかが描かれるだろう。

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