
第16話「原価率改善への挑戦 - 新メニューで生まれる希望」
大正精肉店の経営改善プロジェクトが進む中、家族が数字を意識するようになり、課題が次々と明らかになってきた。特に、居酒屋部門の原価率が40%を超えていることが、架純がまとめたデータ分析から判明した。このままでは利益が圧迫されるばかりで、経営の安定は望めない。
フォレスト事務所の勉強会を経て、数字への意識が高まった利夫も、居酒屋部門の現状を真剣に受け止めていた。「兄貴、俺たちの居酒屋部門、利益がほとんど出ていないってことだな」と、勝に静かに話しかける利夫。その声には悔しさが滲んでいた。
勝は一瞬戸惑いを見せたが、「そうだな、でも、お前なら何とかできるんじゃないか」と穏やかに返した。その言葉が、利夫に火をつけた。
原価率改善の第一歩
フォレスト事務所で行われたミーティングでは、小池診断士が「居酒屋部門では、原価率を30%程度に抑えることで、収益性が大きく向上します」と提案した。架純が作成した詳細なデータを基に、原価率の高いメニューを特定し、それらを見直す方針が決まった。
「例えば、この煮込み料理やステーキの原価率が特に高いですね。一方で、揚げ物系は比較的低い。これらのバランスを調整し、新しいメニューを開発することで、原価率を改善できるはずです。簡単に言うと、1,000円のメニューだったら仕入れを300円に収めれば良いんです」とタカシが説明すると、利夫は目を輝かせた。
「なるほどな!予算300円でお客様に喜んでもらえる新しいメニューを考えればいいんだな」と利夫が熱心にメモを取る。その姿に、小池診断士も「その通りです。利夫さんの経験と創意工夫が、改善のカギになります」と背中を押した。
新メニュー開発が始まる
数日後、利夫は早速、新しいメニューの試作を始めた。厨房では、様々な食材を使い、手際よく料理を仕上げていく。勝もその様子を少し離れた場所から静かに見守っていた。
「まずは、この鶏むね肉を使った揚げ物なんだけど、ジューシーさを出すために下味を工夫してみた」と、試作品を家族に披露する利夫。架純が「これ、お父さんの揚げ物技術を活かしてるんじゃない?」と言うと、利夫は照れくさそうに「まぁ、兄貴の技術をちょっとだけ参考にしたよ」と笑った。
次に出てきたのは、地元産の野菜をたっぷり使った創作サラダ。タカシが「これなら原価も抑えられそうですね」と感心すると、雅子も「これなら女性のお客様にも喜ばれるわね」と微笑んだ。
利夫の試作メニューは次々と形になり、試食をした家族からも高評価を得ていた。その中でも、精肉加工の際に出される牛すじの端材を使用した牛すじ煮込みと地元産野菜のサラダは、コストを抑えながらもお客様に喜ばれる可能性が高いと判断された。
家族の反応と勝の喜び
利夫の試作が終わると、架純がデータを基に試算を行った。「この新メニューの原価率はどれも30%前後に抑えられています。これなら利益をしっかり確保しつつ、居酒屋の看板メニューにできますね」と話すと、利夫は嬉しそうに「やったな!」とガッツポーズを決めた。
勝もその場では口数少なく「そうか、いいじゃないか」と淡々としていたが、その夜、雅子にだけ「利夫があんなにやる気を出してくれるなんて思わなかったよ。俺、正直嬉しくてたまらない」とぽつりと漏らした。
その言葉に雅子は静かに頷き、「あなたの弟さんだからこそ、きっと乗り越えられるわ」と優しく励ました。勝はその言葉を聞き、家族の力を改めて実感していた。
原価率改善の成果と新たな可能性
翌週、フォレスト事務所では利夫の新メニュー案が正式に承認され、実際に店舗で提供を始める準備が進められた。タカシは「これからは原価を意識したメニュー作りが大事になりますね。利夫さんの新しい視点が、居酒屋部門を大きく変えると思います」と評価した。
小池診断士も「家族全員が課題に向き合い、こうして改善の成果を形にできるのは素晴らしいことです。利夫さんの新メニューが成功の第一歩になるはずです」と期待を込めた。
こうして、大正精肉店の居酒屋部門は、新しい希望とともに再出発を果たした。家族それぞれの役割が明確になり、協力して改善に取り組む姿勢が見え始めた瞬間だった。
経営改善の着眼点と支援のポイント
原価率の見える化:商品別の原価率を詳細に分析し、改善ポイントを明確化。
新メニューの開発:原価を抑えつつ、顧客満足度を高めるメニューを創出。
家族の役割分担強化:利夫が新メニュー開発を通じて居酒屋部門の改善を牽引。
利夫の新メニュー開発により、大正精肉店の居酒屋部門は大きな変化を迎えようとしていた。数字を基にした改善が具体的な成果を生み出し、家族全員のモチベーションも高まっていく。次回、大正精肉店の挑戦はさらに加速していく。
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