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小説 フォレスト中小企業診断士事務所〜伴走者たちの協奏曲〜第12話

小池 俊介


第12話「ヤマト製作所、未来へ - 共に歩んだ成長と新たなスタート」


フォレスト中小企業診断士事務所がヤマト製作所の支援を開始してから1年が過ぎようとしていた。この1年で、ヤマト製作所は営業体制の強化、製造キャパシティの拡充、幹部会による組織強化と、会社全体で着実な成果を上げてきた。多くの課題を共に乗り越え、ヤマト製作所の経営基盤は揺るぎないものとなりつつある。


ある秋の午後、小池診断士とタカシ、エリカはヤマト製作所のオフィスを訪れ、支援の総括を行う最後の会議に臨んだ。会議室に集まった社長や幹部社員たちの表情には、この1年で得た自信と充実感がにじみ出ていた。


「おかげさまで、経営再建計画の承認も得られ、メインバンクからの追加融資も継続されるようになりました。これで安心して、事業に集中できるようになりました」と社長が感謝を込めて語った。小池診断士は穏やかに頷きながら「ヤマト製作所さんの努力が、しっかりと信頼を生んでいますね」と答えた。


さらに経理部長からは、利益率向上と財務の安全性に関する具体的な報告が行われた。「案件ごとの管理体制を強化したことで、利益率が改善し、直近決算期では資本性ローンを加味した実質自己資本が安定的な水準にまで強化されました。その結果、財務の安全性も向上しています。また、過去には年間で数千万円あった支払利息が、直近決算期には半額以下に減少し、収益改善に大きく寄与しました」


この報告に、小池診断士とタカシは感慨深げに頷いた。支援開始時に課題とされていた財務基盤の脆弱さは、この1年で大きく改善されたのだ。タカシが「これで財務も健全化され、経営の安定がさらに盤石になりましたね」と伝えると、経理部長も満足そうに笑みを浮かべた。


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さらに続いたのは、保証の緩和に関する話題だった。社長は誇らしげに、「今回の改革により、代表者以外の連帯保証と物上保証が解除され、最近実行された1億円の融資は代表者保証が不要となりました」と報告した。ヤマト製作所の信用力が確実に高まり、金融機関からの評価も大きく改善されているのだ。


これを聞いたエリカが、「代表者保証が解除されるというのは中小企業融資においては一般的ではなく、金融機関さんからの深い信用が裏付けされた証なのではないでしょうか?」と尋ねると、社長は「そうですね。安心して仕事に打ち込める体制が整ったと思います」と力強く答えた。


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その後、ヤマト製作所の各部門のリーダーたちが、今後の方針について順に報告を行った。営業部門からは、積極的な新規顧客開拓を継続し、ヤマト製作所の技術力をさらに広めていくことが語られた。製造部門からは、キャパシティ管理の継続的な改善によって、需要変動に柔軟に対応できる生産体制を確立する方針が示された。さらに経理部門からは、健全化した資金計画を維持し、安定的な収益基盤をさらに強化する意気込みが述べられた。


各リーダーの言葉には、自らの業務に対する責任と誇りが感じられ、ヤマト製作所が全社一丸となって新しい未来に向かって進む意欲が表れていた。幹部会の設立と社内の一体感の強化が、こうした自発的なリーダーシップを育み、組織全体に大きな影響を与えていることが明白だった。


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会議の最後に、タカシが少し照れたように口を開いた。「皆さんのご協力のおかげで、私も多くのことを学びました。この経験をこれからの支援に活かしていきたいと思います」


その言葉に、ヤマト製作所の幹部たちから温かい拍手が沸き起こり、タカシも少し顔を赤らめて笑った。この1年の支援を通じて、タカシもまた共に成長してきたのだ。


そして、エリカが柔らかな表情で続けた。「皆さんの成長を支援させていただけて、私も本当に嬉しく思っています。これからも、どんな小さなことでもご相談いただければと思います」


エリカの言葉に、社員たちは笑顔でうなずき、感謝の意を伝えた。フォレスト事務所のチームとしての支援が、ヤマト製作所の変革と成長をしっかりと支えてきたのだと実感する瞬間だった。


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最後に、小池診断士が締めくくるように語りかけた。「ヤマト製作所さんの成長は、ここで一区切りですが、変革の旅はこれからも続きます。フォレスト事務所は、いつでもお力になれるようサポートしますので、これからもお気軽にご相談ください」


社長は深く頭を下げ、「本当にありがとうございました。社員一丸となり、これからも成長していく所存です。また何かあれば、ぜひご相談させてください」と感謝を込めて答えた。


こうしてフォレスト中小企業診断士事務所とヤマト製作所の支援の旅は一旦の区切りを迎えたが、この1年の経験はヤマト製作所の社員たちにとっても、新しい未来に向かうための強力なエネルギーとなった。


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フォレスト事務所へ戻った小池診断士たちは、最後にそれぞれ感想を語り合った。「ヤマト製作所さんのような会社が成長し続ける姿を見て、僕もまた支援の価値を強く感じました」とタカシが話すと、エリカも「ヤマト製作所さんの成長を見守り、支援できたことが本当に嬉しかったです」と微笑んだ。


小池診断士は、仲間たちの成長を見届けながら「私たちもまたヤマト製作所さんと共に成長したね。次はどんな企業と出会えるか楽しみだ」と力強く締めくくった。


ヤマト製作所との経験は、フォレスト事務所にとっても忘れられない宝物となり、新たな支援の原動力になっていた。

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