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「第8回 浪漫酒場」有限会社魚瀬ゴムの魚瀬 和久 様ご講演レポート

更新日:5月16日



フォレストファームでは、異業種の経営者や起業家が集まり、情報共有や新たなビジネスチャンスを見つける場として、定期的に「浪漫酒場」(経営者の交流会)を開催しております。


2025年4月23日(水) に開催された第8回「浪漫酒場」では、ミニセミナーに続き、ゲストスピーカーとして有限会社魚瀬ゴムの魚瀬 和久 様をお迎えしました。同社は、1983年の創業以来、約40年にわたり、使用済み大型タイヤなどを主原料としたゴムマット製品の製造販売を行ってきた会社です。軽トラックの荷台保護マットは、日本で初めて製造した商品で、酪農用マットと同じサイズであることに着目し商社に売り込んだところヒットしたというエピソードが紹介されました。防波堤の基礎に使用する特許取得済みのマットなど、他に類を見ない製品も手掛けています。


魚瀬さまの波瀾万丈なご経験は、参加者の皆さまを惹きつけました。高校卒業後、特にやりたいことが見つからず、消去法で「机に向かう仕事が嫌だ」と気づいた魚瀬様は、神奈川県立かながわ農業アカデミーに進学し、主に酪農について学ばれました。卒業後、栃木県の農業生産法人に就職されたものの、勤務時間は朝4時から深夜、時には1時までにも及び、寮での一人暮らしは街灯も家もない畑の真ん中、お墓も近くにある不気味な場所だったそうです。相部屋のはずが一人しかおらず、誰もいないはずなのに足音が聞こえるといった恐ろしい経験もされたとのこと。肉牛部門で角切りや子牛の育成、畑での作業(大型特殊・牽引免許を活かしたトラクター作業)に従事されました。しかし、1年半後、会社が酪農事業に参入すると聞き、「このままでは骨になるまで働かされる」と感じ、退職を決意されたそうです。


その後は、三浦半島の農家に住み込みバイトとして滞在し、キャベツやスイカを収穫したり。お昼は海の音を聞きながら作業着のままご飯を食べたりと、「遊び人の人生みたいな感じ」と語る、心穏やかな自由な生活を送られました。冬は菅平高原でスキー場のインストラクターとしても働かれたそうです。


父親の工場に入社後は、畜産関係で培った知識を活かし、主に酪農家向けの営業を担当されます。酪農家である顧客企業の課題解決のため「美人コンテスト」とも称される牛の品評会に参加し、出品される美しい牛の背中を磨いたり、血管の見え方まで計算して乳房の張りを見せたりと、牛を美しく見せるためのサポートや、ときには牛に引っ張り回されるといった貴重な経験もされたそうです。


2021年には、馬関連のゴム製品の需要増に着目し、北海道札幌市に「ユーエイラバー」を個人事業として開業されました。自身の車を売却し、仕事用のハイエースに荷物を詰め込み、フェリーで単身北海道へ渡ったそうです。4月開業を目指して準備を進める中、2月中旬に先代であるお父様(現会長)が倒れられ、危篤状態に。一時は神奈川と北海道を行き来する生活を送られたとのことです。


北海道では大きな馬術競技会にテントを出展し、ゴムマットを並べて営業活動をされました。コロナ禍の緊急事態宣言と重なり、思うように営業できない時期もありましたが、競馬界のトップクラスの馬産者から初の受注を獲得されました。ご自身で寸法を測り、納品した製品を「素晴らしい」と評価されたことが、初めての仕事であり、何よりも嬉しく、自信につながったと語られました。また、展示会で出会った他社の社長から業界の貴重な情報(誰と付き合うべきか、注意すべきかなど)をいただき、営業の幅が広がったそうです。家畜の病気リスクを考慮し、現在はむやみに飛び込み営業はせず、問い合わせを待つスタイルを取られています。


製品は、競走馬用、トラック荷台用だけでなく、鉄道の枕木下、海の防波堤の基礎(特許取得)、駅のホーム、観光農園、庭の防草用、トレーニングジム など、多岐にわたる場所で使用されています。製品開発においては、お客様の細かいニーズ(厚さや表面の突起・溝のパターンなど)に合わせたカスタマイズを重視されています。牛の爪のサイズを測り、滑りにくい格子状のマットを開発するなど、現場の声や用途に特化した製品づくりに励んでいます。ゴムの加工は難しいため、溝などは金型で一度に作る必要があり、パターンごとに金型が必要になるという技術的な側面も紹介されました。中国メーカーにデザインを模倣されるという課題や、商社経由の販売ではエンドユーザーが見えにくく、自社ブランドを出せないといった悩みも話されました。


製品の品質には自信があり、馬が転倒した場合の責任問題についても、マット自体に瑕疵がない限りは、通常牧場側の責任となる業界慣行があるため、メーカーにまで話が来ることは少ないとのことでした。


今後の目標として、お客様の細かなのニーズに応えられる、より寄り添った製品開発を目指すとともに、競合他社に劣る資金力や工場規模を、得意分野を伸ばすことで克服し、新しい工場を建てることを挙げられました。さらに、従業員の身体的・精神的負担を軽減し、誰もが自信を持って働ける工場にしていきたい、という強い思いを語られ、講演を締めくくられました。


副会長であるお母様からは、魚瀬様が北海道で事業を始めた当初、社内事情で会社からの支援が一切できず、お金も知り合いもいない中で「食べるものも満足になく、値引きになった肉ばかり買っていた」という壮絶な日々を送っていたこと、しかし「この事業を絶対に成功させるんだ!」という強い決意で、苦難を乗り越えて今の状況を作り上げたことへの感動的な裏話が披露されました。


フォレストファームでは、今後も「浪漫酒場」を定期開催してまいります。次回の開催日程やゲストスピーカーの情報は、確定次第、当社ホームページやSNSでお知らせいたします。ビジネスの発展を目指す経営者の方は、ぜひご参加ください!


 
 
 

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